養育特例とは、子の養育による報酬の低下が年金額に反映されることを防ぐための制度です

3歳に満たない子を養育している期間中の標準報酬月額が、養育を始めた日の前月の標準報酬月額(養育前の標準報酬月額)と比べて下回った期間について、組合員が申出をした場合は、年金額(老齢厚生年金および退職等年金給付)の計算に際して、養育前の標準報酬月額を当該期間の標準報酬月額とみなします。

短期組合員の方は、第1号厚生年金被保険者として厚生年金に加入しているため、養育特例を含む標準報酬制度の取り扱いは日本年金機構になります。詳細は日本年金機構へお問い合わせください。

 特例の適用イメージ

▼ 徴収する掛金や、短期給付(傷病手当金など)の算定基礎となる標準報酬月額は、実際の(低下した)標準報酬月額が適用されます。
▼ 標準報酬月額が下がった理由は問いません。定時決定、随時改定などで標準報酬月額が低下した場合も適用となります。
  ※年金に関する標準報酬月額には、上限があります。(R7.11.1時点 650,000円)

 対象者

3歳に満たない子を養育するまたは養育していた組合員が対象です。

・ 子と同居する父母双方に適用可能です。
・ 子が共済組合の扶養認定を受けていなくても申出できます。
・ 産休や育休を取得している必要はありません。

 対象の期間

特例の対象期間は、3歳に満たない子の「養育することとなった日(或いは養育特例を開始した日)の属する月」から、「養育特例を終了した日の翌日の属する月の前月」までです。ただし、産前産後・育児休業中(掛金免除の特例期間中)は養育特例を受けることはできません

養育を開始した日

  • 子が出生した日
  • 養子縁組の成立した日
  • 別居していた子と同居を開始した日
  • 新たに組合員の資格を取得した日
  • 育休(掛金免除)終了日の翌日
  • 産休(掛金免除)終了日の翌日
  • 申出の子以外の子について適用されていた養育特例の特例措置が終了した日の翌日

養育特例を終了した日

  • 養育している子が3歳に達した日
  • 組合員ではなくなった日(死亡または退職した日)
  • 他の3歳に満たない子の養育特例を開始した日
  • 子を養育しないこととなった日
  • 育休(掛金免除)を開始した日
  • 産休(掛金免除)を開始した日

 手続き

制度の適用には、組合員からの申出が必要です。育児休業からの復帰後など、子が出生した月の前月よりも標準報酬月額が下がったとき、あるいは下がる可能性があるときに提出してください。申出日(所属が受理した日)の前月までの2年間は、遡ってこの措置が認められます。下記書類を所属機関を経由のうえ、共済組合へ提出してください。

● 特例を申し出るとき
  • 3歳未満の子を養育する旨の申出書 様式集へ
  • 戸籍謄(妙)本 ※複製不可 申出者と子の身分関係および子の生年月日を証明できるもの
  • 世帯全員の住民票 ※複製不可 養育特例の開始日において申出者と子の同居を確認できるもの

ただし、申出書の「子の個人番号」を記載した場合は、②および③の添付は省略できます。

● 特例が終了したとき(子が3歳になる前に特例を終了する場合)
  • 3歳未満の子を養育しない旨の届出書 様式集へ

当該子が3歳になる前に以下の事由に該当する場合にこの届出書が必要です。
(ア)次の子等の産前産後休業(掛金免除)を開始したとき
(イ)育児休業等(掛金免除)を開始したとき
(ウ)当該子が死亡したとき、または当該子を別居等で養育しなくなったとき

 補足 ~基準月が他の実施機関にある場合の取扱い~

3歳に満たない子を養育する者が新たに組合員の資格を取得した場合において、基準月が他の実施機関(※)にあるときは、当該他の実施機関における養育前の標準報酬の月額が引き継がれます。
 ※ 日本年金機構、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、日本私立学校振興・共済事業団

● 厚生年金保険、退職等年金給付ともに特例が適用される場合

養育することとなった日の属する月の前月において地方公務員共済組合(または国家公務員共済組合)の組合員であるため、厚生年金保険、退職等年金給付ともに養育前の標準報酬の月額が引き継がれます。

● 厚生年金保険のみ特例が適用される場合

養育することとなった日の属する月の前月において厚生年金保険の被保険者ではありませんが、当該月前1年以内に厚生年金の被保険者であった期間があるため、厚生年金保険については退職月の標準報酬の月額が「子の出生前の標準報酬」となります。
一方、当該月前1年以内に地方公務員共済組合または国家公務員共済組合の組合員であった期間がないため、退職等年金給付については特例が適用されません

● 厚生年金保険、退職等年金給付ともに特例が適用されない場合

養育することとなった日の属する月の前月において組合員(厚生年金の被保険者)でなく、当該月前1年以内に組合員(厚生年金の被保険者)であった期間がないため、厚生年金保険、退職等年金給付ともに特例が適用されません

 事例

● 事例Ⅰ 3歳に満たない子が1人の場合

基準月:3歳に満たない子を養育することとなった日(子の出生日等)の属する月の前月

ポイント

育休復帰後、育児短時間勤務等により、標準報酬月額が子を養育することとなった日の属する月の前月(基準月)の養育前標準報酬月額を下回っているため、この額が、本人申出により年金額の算定上保障されることになります。ただし、掛金免除期間中は対象になりません

● 事例Ⅱ 3歳に満たない子が複数いる場合

第1子の基準月:第1子が出生したときの属する月の前月
第2子の基準月:第2子が出生したときの属する月の前月
第2子の基準月の標準報酬月額は、短時間勤務等により低下した標準報酬月額となりますが、第2子の産前産後休業開始により第1子の養育特例が終了した場合、第2子の基準月における標準報酬月額は、第1子の養育前の標準報酬月額が保障されます。

ポイント
  • 第1子の養育特例期間中に第2子の産前産後の掛金・負担金免除が始まると第1子の養育特例は終了します。
  • 第2子に係る産前産後休業が開始した際、第1子に係る養育特例が適用できなくなるため、『3歳未満の子を養育しない旨の届出書』の提出が必要となります。
  • 第2子の産前産後および育児休業期間の掛金・負担金免除期間は養育特例が適用されず、次の養育特例は第2子の育休復帰後、再度提出することで適用になり、第1子の養育前標準報酬月額が保障されます。よって、第2子に係る保障が下がることはありません。